今回は「ご紹介します、あなたの月給の1.5ヶ月分です」・・・・タクシー求人ビジネスの中抜き構造」を書こうと思います。
とりま、「祝い金10万円」、「給与保証3ヶ月」、「未経験歓迎・寮完備」・・・・など、そんな派手な条件の求人が並ぶ裏側で、静かに動いているのが紹介会社への成功報酬という名の「中間マージン」が有ります。
求職者が入社した瞬間、タクシー会社から紹介会社に30万円から50万円の手数料が流れていく・・・・・。この【成功報酬型】ビジネスモデルは、タクシー業界ではもはや定番で、一方で、新聞広告やWeb求人のような「掲載型広告」は年々影が薄くなっている様です。
なぜタクシー業界は掲載型よりも成功報酬型を好むのでしょうか?
そこには、職業紹介業に関する業法の制約と現場の事情が絡み合っています。
【そもそも「成功報酬型」と「掲載型求人広告」はどう違う?】
求人の出し方には、主に以下の2つがあります:
区分 成功報酬型(紹介型) 掲載型求人広告
支払先 職業紹介会社(人材紹介) 広告媒体(求人誌・Web)
課金のタイミング 採用成功時に報酬が発生 掲載するだけで料金発生
費用の変動 採用者数や定着状況に応じて変動 固定(月5〜15万円など)
法的根拠 職業安定法に基づく「有料職業紹介」 広告業としての自由契約
規制の有無 厚労省の許可制・報酬上限あり 特に許可不要
【 成功報酬型は「職業安定法」によって認可が必要】
有料・無料を問わず職業斡旋を行うには、「無料職業紹介事業」又は「有料職業紹介事業」として厚生労働省の許可(13-ユ-xxxxxなど)が必要になります。
え、無料で職業を紹介?・・・・・無料職業紹介事業とは、求職者と求人企業の間で、手数料や報酬などの対価を受け取らずに職業紹介を行う事業のことです。主に、ハローワークや大学の就職支援センターなどが運営しています。
行法で「有料職業紹介事業」は、報酬の上限は理論年収の50%未満、紹介会社は求職者からは一切金銭を受け取れない(完全無料)となっています。
【掲載型広告がタクシー業界で廃れた理由】
かつては新聞の折込チラシやタウンワークなどが主流だったタクシー求人も、今ではその効果が激減しています。
理由は以下の通りです:
「広告を出しても誰も来ない」問題
→ 年齢・免許・勤務条件などで応募母数が激減
→ 出したところで応募ゼロが当たり前
応募が来ても定着しない
→ 自社で面接・選考・フォローまで手間がかかる
→ 採用担当者の負担が大きすぎる
結局、紹介会社経由で来た方が確実
→ 書類送付・面接設定・定着サポートもやってくれる
→ 手数料を払ってでも欲しい、という現実的な判断
結果、「広告に5万円払って誰も来ないくらいなら、紹介会社に50万円払って確実に1人来てもらった方がマシ」・・・・・これが多くの中小タクシー会社の本音です。
【実際の紹介会社とその報酬水準】
以下に主な実際の紹介会社とその報酬水準を記載しています。
紹介会社名 成功報酬相場 特徴
タクQ 約30万〜50万円 定着率に応じて報酬が変動する仕組みあり
ドライバーズワーク 約25万〜45万円 紹介後もアフターフォローあり
タクシー屋さん 非公開(概ね30万円) エリア特化・祝い金併用が多い
P-CHAN TAXI 非公開(概ね35万円) 寮付き求人・地方にも強い
※~の部分は、タクシー会社と紹介会社の関係性によって幅が有ります。
※報酬は1人採用あたりの金額、タクシー会社が支払う。
【「祝い金」の正体、それは広告費の一部です】
多くの紹介サイトで見かける「入社祝い金10万円支給!」という文言がります。
これを見て「お、得だな」と思う方も多いでしょうが、その原資は紹介会社が出しているわけではありません。
実際には、タクシー会社が「紹介経費」として支払っている中から、紹介会社が求職者へ一部を「祝い金」として戻しているだけです。
つまり祝い金とは、「感謝のプレゼント」ではなく、あらかじめ含まれていた広告宣伝費の「キャッシュバック」です。(笑)
タクシー会社としては、紹介会社に50万円支払い、そのうちの10万円が求職者に「祝い金」として渡っているだけです。
感謝されるのは紹介会社、財布が痩せるのはタクシー会社、という皮肉な構造です。
仮に入社祝金画20万円だとして、紹介会社から祝金10万円あり、入社祝金制度有り、とした方が
この紹介会社から紹介されると紹介会社からも「祝金」10万出るんだ~・・・・草Wです。
【呼び方が変わっただけ、「紹介」は昔からあった】
今では「リファラル採用」なんて格好いい言葉になっていますが、
昔は「誰か連れてきたら3万円やるぞ」で済んでいました。
ビール券や米が報奨だった時代もあり、やってることは今とほぼ同じです。名前と単価が変わっただけで、「人材紹介ビジネス」という体裁を得たのが今のスタイルです。
【結局、誰が得をして、誰が損をしているのか】
紹介会社:確実に得する。採用されれば数十万円の報酬。
求 職 者:祝い金がもらえて得をした気分(ただし給与に転嫁されている場合も)。
タクシー会社:採用はできるが、莫大な紹介費と祝い金を負担。
広告費がかかっても応募がない、そんな現状では、紹介会社の提案に乗らざるを得ないのが本音。
自社採用できる体力がある会社は、むしろ稀な存在となっています。
【中抜きを嘆くより、使いこなせ】
タクシー会社にとって、人材紹介の中抜き構造はもはや避けられない「採用コスト」の一部で、であれば、紹介料の交渉や定着保証制度の有無、祝い金の条件などをしっかり確認した上で使いこなすべきです。
成功報酬型が悪いわけではなく、「知らないまま使わされている」ことが問題。
紹介が支払う「祝い金」は無料のプレゼントではありません。それはタクシー会社が紹介会社を通じて「自腹で差し出した広告費のカケラ」なのです。